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スカーレット オーク
第7章 7 窯出し
緋紗のぼんやりした休日が過ぎ、また陶芸中心の生活がやってくる。
今日は窯出しだ。
千二百度以上に焚き上がった窯が、常温近くに冷めるには一週間前後かかるが今回は松尾の展示会の予定もあり、少し早目に出すことになった。
山土で封をした入り口を鉄鎚でコツコツとほじる様に開ける。
温度差による冷め割れをさせないように頑丈に封をしているため簡単には開けられない。
なんとかレンガを一つ緩め引き抜くと、むわっと熱風が顔を舐める。――あつつ……。
もう慣れているはずの熱風だが、今回はなんだか初めて味わう熱波のように感じた。――いつもより早く開けるからだ。きっと。
また作業に集中する。
なんとか入り口が全部開いて中に入れるようになった。
「先生。開きました」
師の松尾ががライトを照らし火前の焼けを確認する。
「まあ狙い通りじゃな」
備前焼は薪で焼く。
全国の窯業地では電気やガスなどで焼かれることも多いのだが、備前焼は土と炎によって景色が決まるので釉薬によって変化する陶磁器とは一線を画す。
緋紗がほかの窯業地をふらっと見てきたが備前に舞い戻ってしまったのはこの炎のせいだろう。
窯を焚きながら、炎をこんなに見て感じられるのは備前しかない。
絵を付けたり釉薬を調合して掛けることも楽しかったが、窯に詰めてからの達成感が他の産地にはなかった。――窯焚きが一番興奮すると思う。
残念なのは窯の規模もやはりほかの窯業地と違い個人でも相当大きいため、窯を焚く頻度が年にせいぜい二回程度なのだ。
ただ岡山県内には備前焼作家が何百人もいるらしいからどこかしら窯に火が入っていることだろう。
今日は窯出しだ。
千二百度以上に焚き上がった窯が、常温近くに冷めるには一週間前後かかるが今回は松尾の展示会の予定もあり、少し早目に出すことになった。
山土で封をした入り口を鉄鎚でコツコツとほじる様に開ける。
温度差による冷め割れをさせないように頑丈に封をしているため簡単には開けられない。
なんとかレンガを一つ緩め引き抜くと、むわっと熱風が顔を舐める。――あつつ……。
もう慣れているはずの熱風だが、今回はなんだか初めて味わう熱波のように感じた。――いつもより早く開けるからだ。きっと。
また作業に集中する。
なんとか入り口が全部開いて中に入れるようになった。
「先生。開きました」
師の松尾ががライトを照らし火前の焼けを確認する。
「まあ狙い通りじゃな」
備前焼は薪で焼く。
全国の窯業地では電気やガスなどで焼かれることも多いのだが、備前焼は土と炎によって景色が決まるので釉薬によって変化する陶磁器とは一線を画す。
緋紗がほかの窯業地をふらっと見てきたが備前に舞い戻ってしまったのはこの炎のせいだろう。
窯を焚きながら、炎をこんなに見て感じられるのは備前しかない。
絵を付けたり釉薬を調合して掛けることも楽しかったが、窯に詰めてからの達成感が他の産地にはなかった。――窯焚きが一番興奮すると思う。
残念なのは窯の規模もやはりほかの窯業地と違い個人でも相当大きいため、窯を焚く頻度が年にせいぜい二回程度なのだ。
ただ岡山県内には備前焼作家が何百人もいるらしいからどこかしら窯に火が入っていることだろう。