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スカーレット オーク
第10章 10 ラブホテル
もやもやしているうちに、「降りよう」 と手を引かれていた。
いつの間にか到着していたらしい。――ラブホらしい外観だなあ……。

「地味なラブホってないよね」

 くすりと笑いながら緋紗を見た。
緋紗も、「そうですよね」と、相槌をうったがまだもやもやしていた。

入り口の前で、「あ、あの」さっき思いついた想像を聞こうと思ったがこんなところで話し合う気まずさに自分が堪えられなくて言葉を飲んだ。

「やっぱりやめる?」

 大友に優しく聞かれ反動で、「いえ、いきます」と、なんだか軍人のような返事をしてしまった。
今日は前と違ってあまりアルコールも入っていないせいか、ごちゃごちゃ考えてしまう。
欲望が薄れてきているのかもしれない。――今日できっとわかると思う。
 緋紗はそこで納得して考えるのをやめた。

「どこがいい?」

 部屋を選ぶパネルの前に来た。

「うーん。こことか」

 少しだけピンクっぽい照明の部屋を指さす。
白っぽいとビジネスホテルのようだし、派手なピンクや紫はどぎつ過ぎた。

「じゃ、いこう」

 ボタンを押して部屋に向かった。
また少し緊張してくる。
大友が先に歩き部屋の扉を開いた。

「どうぞ」

 緋紗から部屋に入る。
パネルよりも可愛らしいピンクでいやらしい感じはなく少しかわいい女の子の部屋という感じだ。
ラブホらしくない気がしたが自分のそっけない部屋とはやはり違うと思ってキョロキョロ見回した。

大友はやはり荷物をソファーの付近へ置いてジャケットを脱ぎハンガーにかけ、ネクタイを緩めている。
前回のビジネスホテルでの態度と同じだ。――この人はどこにいても変わらないのかもしれない。
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