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旧公爵令嬢 漆原ノア〜恥辱の3日間
第1章 プロローグ
「御父様……なんて酷いことを……私に断りもなく、そのような婚約を……おかしいではありませんか?」
ノアは烈火の如く怒った。
ノアが怒ることは、源太にもわかっていた。
しかし、漆原家にはもう後がなかった。
「頼む……私を助けると思って、なんとか……それに孫野くんは好青年だった。彼ならそなたも気に入る」
「そんなのわかるわけありませんわ。御父様は娘の私が大事ではないのでございますか?」
ノアの怒りは収まらなかった。
「もちろん。大切だ。だからこそ、そなたの意思を確認しておる」
「何が意思の確認でございますか……私にその婚約を断るという選択肢は、ないのでありましょう。ならそのような意思の確認など、無意味でございます」
キッパリと言い切ったノア。
その気性の激しさに、かわいいひとり娘とはいえ、教育を間違えたかと源太は後悔した。
源太は、しょんぼりとした顔をした。
その顔を見たノアは、源太のことを不憫に思った。
この没落しようとしている、旧公爵家である漆原家をなんとか守ろうとして、空回りどころか、悪い方向へ導こうとしている。
『御父様を救えるのは私だけだ』
感情に任せたまま、怒り狂ってしまったノアだが、ここは父親の言う通り婚約をした方がいいと思い直した。
源太は、しょんぼりしたまま、ノアの部屋を出ていこうとしていた。
「御父様……待ってください。私も言い過ぎました。御父様と同じように、私も漆原家の人間です。その婚約やはりお受け致します」
そうノアが言うと、源太はノアのもとに駆け寄り、手を握りしめた。
「ありがとう……ありがとう……」
そう言って、源太は何度もノアに頭をさげた。
話を冒頭に戻すと、奇妙なことに気がつく。
それは漆原夫婦が、別荘地の相談をする相手が、大企業になっていることだ。