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独占欲に捕らわれて*Regret
第5章 平穏へ
「君がそういうことを言うのは意外だな。千聖さん以外何も見えていないのかと思っていたが」
「もちろんチサちゃんしか見えてないけど、シナリオライターとしてそれなりに人間観察してるからねぇ」
「そういえばそんなこともしてたな」
「むしろそっちが本業なんだけど」
 斗真は紅玲がムスッとしながら言うのに気づかないふりをして、カバンからクリアファイルを取り出して晶久の前に置く。晶久はクリアファイルから資料を取り出すと、黙々と読み始めた。

「お察しの通り、優奈さんは僕の恋人だ。そして新しい仕事の秘書でもある」
「秘書!? 優奈が!?」
 千聖が目を見開いて優奈を見ると、彼女は照れくさそうにえへへと笑う。
「実はアパレルの仕事しながら、ワードとかエクセルとか色々勉強してたんだ」
「僕と優奈さんのことはとりあえずここまでにしてくれないか? それで晶久さん、あなたへのお願いはもう察しがついているでしょうが、これから僕が立ちあげる会社で、一緒に働いてくれませんか?」
「仮に私を入れたとして、社員は何人だ?」
晶久は資料を読み続けながら質問を投げかける。資料で隠れた顔は生き生きとしており、珍しく口角が上がっている。紅玲はそれを横目で見ると、零れた笑みを隠すように紅茶を飲んだ。

「今のところは3人です」
「そうか」
晶久は資料を置くと室内を見回し、紅玲を見る。
「紅玲、なにか書くものはあるか?」
「コピー用紙とボールペンでいい?」
「紙はメモ用紙やレシートでも構わない」
「じゃあ遠慮なく」
紅玲は腰を浮かせてポケットから長財布を取ると、細身のボールペンとレシートを出して晶久に手渡した。晶久はレシートの裏に自分の連絡先を書くと、斗真に渡した。

「私のような年寄りでよければ、手伝わせてもらおう」
「ありがとうございます、とても心強いです。若輩者ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼みますよ、社長」
斗真は胸を撫で下ろすと、握手を求める。ふたりが固い握手をすると、紅玲と千聖は顔を見合わせ、どちらからともなく微笑んだ。
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