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独占欲に捕らわれて*Regret
第2章 紅玲の憂鬱
「会社が倒産した後に、どう助けろって? もう手遅れだよ」
「本当にそうかしら?」
千聖はお気に入りのザラメ煎餅をかじると、紅玲と目を合わせた。
「倒産したってことは、今借金地獄にいるんじゃない? そこから救ってあげたら? 本当の手遅れは、お義父さまが借金苦で自殺することじゃないかしら」
「確かに、チサちゃんの言う通りかも。お茶が終わったら、さっそく行こうかな」
紅玲は躯を起こすと、ひとくち最中を頬張った。

「ねぇ、私も行っていい? お義父さまにご挨拶したいし、何よりあなたひとりで行かせたくないの」
「あっはは、心強いよ。ありがと」
紅玲は千聖の肩を抱くと、彼女の柔らかな頬にキスをした。

お茶の時間が終わると、紅玲は小さなアタッシェケースに札束をいくつか詰め、コートのポケットに警棒を忍ばせて玄関へ行く。玄関では、既に支度を終わらせた千聖が待っていた。
「お待たせ」
「ねぇ、それ何?」
千聖はアタッシェケースを指さす。

「お金。とりあえず600万入ってる。まぁこれだけでどうにかなる額ではないけど、手土産くらいにはなるでしょ」
「600万の手土産ってそうはないと思うけど……。でもお義父さまは助かると思うわ」
「ならいいけど。じゃあ行こうか。実家は電車で行った方がラクだから電車でね」
「じゃあ手を繋いで歩けるのね」
嬉しそうに言う千聖があまりにも愛しくて、紅玲は触れるだけのキスをする。

「もう、いきなりどうしたの」
「チサちゃんが可愛いこと言うからだよ」
紅玲は玄関のドアを開けながら言うと、千聖の手を握って家から出た。家から駅までは徒歩4分。ふたりは雑談をしながら駅まで歩く。

「ねぇ、紅玲の実家ってどこにあるの?」
「すぐ近くだよ。ここから2駅乗って、5、6分歩いたところ」
「本当に近くね」
紅玲が自ら親子の縁を切ったことを知っている千聖は、てっきりもっと離れたところにあると思っていた。
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