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独占欲に捕らわれて*Regret
第2章 紅玲の憂鬱
「父さんの会社は反対に行く電車に乗るから、こっち側なら会うこともないと思ってね。何より、自分が知ってる街の方が住みやすいし」
千聖の考えることを察したのか、紅玲は苦笑しながら答える。
「なるほどね……」
千聖が納得したところでふたりは改札を潜り、ホームへ行く。幸運なことにお目当ての電車はすぐに来てくれた。

「なんだか緊張してきた……。いろんな意味で」
「なかなかないと思うよ? 借金抱えた義父に挨拶に行くなんて。後で感想聞かせてよ、そのうち役に立つかもしれないし」
「本当に作家脳ね……。でも、おかげで少し気が楽になったわ、ありがとう」
「オレは純粋にどんな気持ちか気になっただけ。でも、チサちゃんのお役に立てたならよかったよ」
どちらかともなく笑い、和やかな気持ちで目的の駅で降りる。

「ここに来るのも、大学準備以来以来だなぁ……」
紅玲はホームを見回しながら、しみじみ言う。
「そんなに帰ってないの?」
「父さんと会いたくないからひとり暮らししてたわけだし、唯一の友達だって、オレと一緒に同じ街に引っ越したからね」
「まぁ、分からなくもないわ……」
紅玲と同じ理由で田舎町から東京へ来た千聖は、うんざりしたように同意する。

「あっはは、まぁそういうこと。街並みもそんなに変わってなければいいんだけど」
ふたりは駅から出ると、紅玲の案内で街中を歩く。
「都会にしては割りと静かね」
千聖は物珍しそうに街を見回しながら言う。店がたくさんあったのは駅の周辺くらいで、駅から離れたら住宅街だ。

「住宅街だからねぇ。あと10分も歩けば、また色んなお店があったりするけど、駅ほどでもないかなぁ」
「そうなのね。東京にこんな街があるって、ちょっと意外かも。どこも大きなビルやお店がいっぱいってイメージだったから」
「東京内でも格差やらなんやらはあるからねぇ。それにビルやお店だらけじゃ、生活出来ないだろうし。あ、あれ。オレの実家」
紅玲はこの辺りで1番大きな2階建ての家を指さしながら言う。
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