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わたしは桜になりたい
第1章 わたしは桜になりたい
「お前が羨ましがってる桜は
ぜんぶ
ツクリモノだ」
………なに?
何………言ってるの?
「お前が言う桜は、ぜんぶ、美しくあるように、作られただけだ」
そんなわけ………ないよ?
綺麗なのも儚いのも、それが桜のありのままの姿だからでしょう?
自然の美しさだから、みんながこぞって褒めるんでしょう?
「お前が言う " 自然 " が、手を加えないって意味なら、そりゃあ」
「お前、騙されてんだよ」
騙す?
誰が?誰を?
「誰って──…桜に、さ」
「いや……人間にかもしれねぇな。綺麗な桜を、作り出した人間に、お前も騙されてるだけだ」
「桜はツクリモノだ」
「正確に言えば……かけ合わせだ」
「花が葉っぱより先に咲くのと、人間好みの花の木を、かけ合わせて生まれてる」