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わたしは桜になりたい
第1章 わたしは桜になりたい
ごめんなさい
ごめんなさい
貴方のことを何ひとつ知らずに、勝手な言葉で傷を付けてごめんなさい……
涙が溢れた
夢を壊された辛さと
信じていたものを否定された衝撃と
桜が持つ悲しみの深さに呑み込まれて
わたしは涙を流さずにいられなかった
まさかこんなに愛されている貴方まで
わたしと同じだったなんて知らなくて……
「──…は?
まだ、そんなこと言ってんのか」
「お前は俺たちとは違うだろ?」
「ツクリモノでしかない桜は、どれも短命だ」
「かけ合わせで生まれた桜の寿命は──他の木よりもずっと短い。人間よりもずっと短い」
「でも誰ひとり気にかけない」
「桜の寿命なんて気にかけない」
「興味ないからだ」
「春がきて…花を咲かせりゃあ人間が集まる。もし、咲かせる力が残ってなけりゃあ、見向きもされない」
「誰にも気付かれない」
「そうやって死んでいく」
「そうやって、枯れたんだ、桜は」