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ハイパーテクニックおじいちゃん
第16章 引っ越し
いつものように口元には笑みを浮かべていたが、瞳は潤んでいるように見えた。
「寂しくてなるね」
そう言われると、美里も貰い泣きしてしまいそうだ。
「これ、餞別だよ」
寛から、何やら紙袋を手渡された。
中をそっと覗くと、洋形封筒とプレゼント用のリボンがついた半透明なビニール袋が入っていた。
「ありがとう」
次の言葉が見つからない。
気がつけば、涙が頬を伝っていた。
すると、寛に抱き寄せられた。
仕事中の汗の香りがする。
突然、ふわっと風が舞った。
「もう行かないと」
お互い体を離すと、手を取り合った。
そして、手を繋いだまま、階段を下りた。
マンションの敷地の端まで来たら、二人は立ち止まった。
「元気でな」
寛が繋いでいた手を離し、その手を振った。
美里も一歩二歩、手を振りながら歩き始めた。
何度も振り返りながら進んで行く。
寛の姿がどんどん小さくなって行く。
四つ角まで来て、美里は最後に両手で大きく手を振った。
寛はいつもの優しい笑顔だった。

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