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異常行動が日常行動のオンナ【完結】
第8章 姉と妹の決着/イカレ勝ちしたもの
その2



ツグミが桜木家に到着したのは、夜6時前だった。


「ウチの親は転勤族でね。オヤジは今、海外なんだ。母はオレの方もケンの方も早死にでさ。要は、君たち姉妹と一緒で兄弟二人住まいでね」


「たぶん、そう言う共通軸もお姉ちゃんは加味したと思いますよ。あの人からすると、それがシュチエーションになるのかも知れないわ」


「うん…、ああそうだ。うっかり忘れていたが、ケンには連絡しないとな。今日は部活で遅くなるとは言っていたが…」


”もう少し早く、”それ”には気づくと思ったんだけどね…”


ツグミは思わず苦笑した。


***


「つながんねーや。ライン入れとくか…」


ツグミはあらかじめケンには、家に着くまでスマホの電源を切っとくようにと連絡していた。
姉が自分のケータイからケンの番号を盗んだから、今日かかってくるはずだと言って…。


何しろツグミにとって、その日の行動は賭けでもあった。
姉のシグナルを読み違えていれば、万事休すだ。
郡姉妹の”決着”は心理ゲームにも行き着いていたのだ。


***


桜木兄は、どうも頭の回転がゆったりとしていた。


「あのさあ…、よく考えてみると、ツグミちゃんの解釈通りとしてだよ、お姉さんのターゲットってさ、オレじゃなくてケンでもよかったんじゃないのか?」


”そうよ…、普通、すぐにそこを突くわよね”


ツグミは心の中で再び苦笑していた。


「実はお姉ちゃん、ケンに惚れちゃったんです。帰ってきたら聞いてください。この前コンビニで待ち伏せされて、ズバリ誘われたそうです。まあ、彼はああいう人なので、きっぱり断ったって言ってました」


ツグミはためらわずそう切り返した。


「そうなのか…」


「ごめんなさい…。私、色々想定が頭巡って、ケンには昨日会ったんです。ただそのこと、お兄さんにはしばらく黙ってようって…」


「そう…」


この時点で郡ツグミは、平気で二人に嘘をついていた。
彼女は実質、桜井兄弟を掌に乗せていたのだが、決して自覚してのことではなかった…。


***


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