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モテない僕が何故かハーレムな甘々寮生活をしてるんだが
第1章 入寮
3月31日の午後1時、僕は、ひなびた田舎の風景の駅に降り立った。

線路は単線、駅舎には駅員がおらず、僕は「投入してください」と書かれた箱に、切符を放り込んだ。
そして駅舎から外に出て、僕はぼうぜん。
『…な、なんて田舎なんだよー?』
駅前には、家一つなかった。田畑が広がっているならまだいい、目の前にあるのは完全な野原だった。
そしてすぐ近くに迫る、山地。標高はそれほど高くないが、間近に見えるその存在が、ここをど田舎だと再認識させてくれる。

「はあ…」
僕は、深くため息をついた。
スマホをポケットから取り出す。いちおう、持ってきた。
いちおう、というのは、ここが圏外だと聞かされていたから。
『ふうー、やっぱりか』
圏外だった。
インターネットの環境では、もちろん、ない。
『ゲーム、したいな…』

僕が、こんな田舎にやってきた(というより、送られてきた)理由は、この田舎にある県立中学に転入するからである。
その県立中学というのが「脱ネット」という独自の教育方針で今年新設された学校で、要するに僕のようなアニメ・ゲーム中毒者を送り込んで再教育するという。
僕は、いっさいのネット環境を奪われ、ここにやってきた。

『今、何時だろ?』
スマホを見るが、ディスプレイは真っ黒。
僕は、駅舎を見上げた。時刻を見るためにこういったアナログ的な動作をしなければならないとは、面倒でしかたがない。
駅舎の壁に、古ぼけた針で動く時計が掛かっていた。
1時5分。

その時、だった。
「コーキ君ですね?」
後ろから、突然おっさん声で呼ばれた。
振り返ると、鼻の下にひげを蓄えたアラカン(還暦アラウンド)くらいの初老の男が立っていて、そばにはいつの間にか車が駐車していた。
「わたし、県立第三中学の校長です」
と名刺を出してきた。
<蟻村伸介(ありむら・しんすけ)>
「寮まで送ります。お乗りください」
僕は、言われるままに車に乗り込んだ。
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