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第1章 許嫁増殖

一刻も早く家に帰り父親に事情を問いたださなくては、と翔太の歩く速度は上がる。
ようやく自宅に近づいた、その時--

「おいっ！　翔太っ！」

苛立ったような女性の声が聞こえ、翔太はびくんっと足を止めた。
もう本当に、これ以上許嫁が増えるのは勘弁してくれ、と願いながらゆっくりと翔太とさくらは振り返った。

「なんだ、天谷かよ……驚かすなって」

そこに立っていたのは翔太の幼なじみの天谷聡子（あまがいさとこ）だった。

「なんだよその言い方は。あ、あああのな、あたし翔太の許嫁になったから。しゃーないから結婚してやるよ」

ショートヘアで褐色に焼けた幼なじみは照れくさそうにそう言い捨てるとぷいっと顔を背けた。

「はぁああっ!?」

「ななななんだよっ！　そのリアクションはっ！　あたしだって好きで翔太なんかとけけ結婚したい訳じゃないんだからね!!　許嫁なんだから仕方ないだろっ！」

褐色だからよくわからなかったが、焼けてなければおそらく真っ赤な顔であろうことは明白なリアクションで天谷が文句を言った。