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大魔王の子を孕みます
第10章 新月
項垂れる俺の顔を紫の瞳が覗き込む。
「顔色も悪いな…、出来るだけ早く人の村にシロを連れてってやるからな。」
俺の顔を撫でてライズが言う。
「人の村?」
「そこには太陽がある。人工的に作り出した太陽だが、人は適度に太陽光を浴びなければ身体が衰弱するものなのだろ?」
「へえー、ライズって人間に詳しいな。」
「私の母は人間だったからな。」
寂しい笑顔に胸の奥がザワつく。
人間だった?
なら、今は?
俺と同じ経験をした人間の事を聞きたくなる。
「ライズの母ちゃんって…。」
そこまで言うと甲高い声が響く。
「姉様っ!なりませぬっ!」
声と同時に食堂の扉が乱暴に開く。
「姉様っ!」
声の主はリリスだ。
だが、久しぶりに見るリリスの顔は怖いほどに青ざめてて恐ろしい目で何かを睨み付けてる。
リリスの視線の先…。
初めて見る背の高い女が居る。
リリスに姉様と呼ばれる女は、リリスと同じ色をした紫の髪を古臭いデザインでキツく結い上げて団子に束ねてる。
釣り上がる紅い目はどこかの口うるさい学校教師を思わせる。
かなり痩せてて細い身体だが、髪と同じ色をしたドレスが身体にピッタリと張り付いてて、メロンのような胸が重そうにぶら下がってる状況だ。
「やあ、エリス…、いらっしゃい。」
ライズはのんびりとリリスの姉、エリスに挨拶をする。
「何をしにいらしたのですか?」
苛立ちを見せるリリスだけがエリスに向かってキャンキャンと吠えてる。
リリスの言葉にくっとエリスが馬鹿にしたように笑う。
「何って…、大魔王様の為に妻が新月のご挨拶に来るのは当たり前の事でしょ?」
エリスがねっとりと放った言葉に俺の頭はハンマーで殴られたようにぐしゃぐしゃになった。