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大魔王の子を孕みます
第2章 大魔王屋敷
無様に俺の鎧がカタカタと音を奏でる。
震えが止まらない。
人生で初めて味わう本物の恐怖…。
「たかが剣士風情が…。」
リリスが可愛げなくニヤリと笑う。
「それで…、剣士『シロ』…、何しにここへ現れた?」
ゆったりとした口調でライズが問う。
「俺…は…。」
大魔王を討伐に…。
言えない。
言えばきっと殺される。
ゲームだから死ぬはずは無いのだと何度も自分に言い聞かせてるが死を間近に感じる恐怖が拭えない。
俯く俺の顎をライズが指先で持ち上げる。
長い爪…。
白く、しなやかで美しい指先…。
美と恐怖の大魔王が紅い舌をチロりと出し、俺の鼻先をペロリと舐める。
「何っ…すんだよっ!?」
再び剣を握り身構えればリリスの指先に黒い炎が灯る。
「おのれ…、剣士風情の屑がライズ様のご寵愛に歯向かうつもりかっ!」
リリスが俺に牙を剥く。
今の俺ではこのリリスにすら勝てると思えない。
殺される…。
その恐怖が一層深まり、俺の足が震え出す。
更にリリスが目くじらを立てて俺を睨む。
ライズはのんびりと
「生クリームの味見をしたが、少し甘かったかな?」
とか言ってる。
ライズは俺の鼻先に付いた生クリームで味見をしたらしい。
本当なら笑える…。
これがゲームなら絶対に笑ってる。
大魔王が人の鼻先に付いた生クリームを舐めて味見してる設定とか馬鹿馬鹿しくて笑うしかない。
なのに俺は笑えない。
押し寄せる恐怖に抗えず、俺の脚に生暖かい水が流れ落ちる。
「ライズ様の台所を汚すとは、お前を消し炭にしてこの世から消し去ってやる。」
リリスの手に黒い炎の渦が巻く。
恐怖の中で俺は驚愕する。
失禁してる…。
なんでだ?
排泄行為が出来ないのがデュセリオンだろ?
そう思うのに、俺はみっともなく大魔王の目の前で『お漏らし』をやってる間抜けな剣士を演じてる。