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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶
先生は、あ、と何か思い出したような顔をして、
押し入れの中から女性ものの靴を出してきた。
「まえの、?」
「うん、前の、子」
決まりが悪そうに肩をすくめた後、笑って、
私はその靴を履いた。
不思議なくらいぴったりだった。
外は先生が言った通り、雲一つない空が広がっていた。
白々しい空に思わず額に手を当てる。
春が顔を出しているようだった。
「ここ、どこなの」
「さあ、どこでしょう」
「私昨日結構歩いたけど、まだ市内?」
「ひみつ」
携帯を持っていない私はなにもわからずに、先生はそんな私をもてあそぶ。
にやにやと笑いながら私が顔をふくれさせるのを見ていた。