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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶
辺りは私の知らない町並みだった。
名前の知らないスーパー、ちいさな電気屋、古びた自販機、シャッターの閉まった弁当屋。
都市からは離れているようで、すぐ近くにこんな町があったなんて知らなかった。
先生は私の少しだけ先を歩いていて、私はそれを追うように歩いた。
どこか、行く場所があるのだろうか。
私たちは少しだけちぐはぐに並んで、話をした。
毎日の暮らしぶりの話、さっきのチャーハンの話、最近先生はパズルゲームにはまっていて、それがとてもおもしろいという話。
どの話も、先生は先生のままだった。
模範的で、穏やかで、優しい先生だった。学校にいるときと同じ、先生だ。
時々笑いながら、あたたかな陽のなかを歩いて。
私たちはきっとはたから見ればただの恋人か、仲良しの友人で、それがとてつもなく奇妙に思えた。
______先生と、生徒、なのにな。
私はふ、と足を止めた。