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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶
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「いいよ、一回荷物取りに帰るね」
「えーほんと! んーん、全部貸すからこのまま行こ!」
そういうと、荷物を片付けたばかりの私の手をひき、教室を出た。
「青木さよーなら」
「さよならー気を付けて帰れよー」
芽衣が軽い調子であいさつをすると、
先生が私のほうをみてにこっと笑った。
芽衣の学校から少し離れた場所にあった。
「一等地だ…」
私がその大きな建物に思わず声を漏らすと、芽衣が得意げに鼻を鳴らした。
両親はどちらも外資系の会社に勤めていると以前きいたことがある。
暮らしぶりの違いにげんなりとするが、芽衣の底なしの明るさはこうした完璧な家庭から出来上がっているのだと思うと納得できた。
その日はピザを取った。二人では食べきれない量を、いろいろな話をしながらちまちまと消費した。
大きなテレビに映る映画をみたり、重低音までしっかりとひろわれたスピーカーからクラブミュージックを流したり、しゅわしゅわとしたバスクリンを入れて一緒にお風呂にはいったり、
くらくらするほど素晴らしい夜だった。
こんな暮らしを、こんな優しくてにぎやかな夜を、ずっと夢見ていた。
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