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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶


「クラスも一緒で、一緒に帰ったりとか休み時間話したりとかもたくさんしててね、」
布団をきゅっと握る芽衣の指先が見える。
クラスにそんな人がいたなんて知らなかった。可愛らしさに思わず顔がほころぶ。

「でもね、好きっていったら全部崩れちゃうような気がして、言えないの。でもでも、その人のそばにいる時間は私がいっちばん長いんだよ、絶対! 」
芽衣が意地になって声をはる。顔はみえないのに、その可愛らしさに思わず心がきゅんとした。

「だからね、今は幸せなの」
へへ、とまた笑う。

芽衣がこんな風に、なにかひとつのことを熱く語っているのは、はじめてきいた。
教室で大声で笑っているいつもの様子からは、想像できないような。
私はおもわずふふ、と声を漏らす。

「もー笑わないでっていったじゃん!」
「違うよ、かわいくて。デート誘ったりとかしないの」
「そんなんじゃないの。私はその人のそばにいられるだけで十分なの」

布団で口元を隠すようにして、芽衣がとなりで言う。
照れているのが、かわいくて私は思わずその手を握った。



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