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片時雨を抱きしめて
第3章 第三章 記憶
なにも言えずにあんぐりとしている私の手をきゅっと握って、またこう言った。



「なんか協力できることあったら、なんでも言ってね」

横にいる芽衣の気配が、やさしい。

「私にできることなら、なんでもするから」

どこかで、聞いたことのある言葉だと思った。
前にも、誰かに言われたことのあるような_____。

あ、

あの時は、こんな穏やか夜ではなかった。
乱れて。
なにも、かも。

「それ、先生にも、言われたことある」

______俺にできることなら、なんでもする。

「あいつ意外とキザなとこあんのね、笑える。

___話したくなったら、いつでも話してね。
なんかあったんでしょ、どうせ」

芽衣が私の手に指を絡めた。細くて、冷たい。


「私にできることなら、なんでもする」

芽衣はもう一度そうつぶやいて、それから何にも言わなくなった。

しばらくするとすう、と穏やかな寝息が聞こえて、私はその細い指をそっと離した。
誰かと眠るのは久しぶりだった。


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