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蕾は開き咲きほこる
第11章 イブの奇跡
――私……光春さんに抱かれたんだ……
光春さんの温かな腕の中で目を覚ました私は、気持ち良さそうに眠る光春さんの寝顔を見ながら昨日の夜の事を思い出していた。
バーで末弘さんとの過去の話を聞き、今まで末弘さんとの約束を頑なに守ってきた光春さんが桜子さんの後押しもあって前に進むことを決めた。
そう決めても簡単に気持ちが切り替わるはずもなく、時折見せる寂しそうな表情に無理をしているのが分かった。
それはバーを出てからも変わることはなく、暗闇の中を歩く光春さんの背中を見ていたら「こんな夜にひとりで過ごさせたくはない」と強く思い、考えるより先に身体が動いて光春さんを後ろから抱きしめていた。
『汐里?』
いきなり抱きついた私に驚いている光春さんをさらに強く抱きしめると、服越しにでもお互いの体温が伝わる。
その体温と共に、私の気持ちも伝わればいいと願いながら今の想いを伝えた。