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蕾は開き咲きほこる
第13章 友人
「すごく美味しいです。このロースビーフすごく美味しい」
良い具合に赤身が残っていて、ワインのソースとの味のバランスが絶妙だった。
「ローストビーフを見ると思い出しますね」
「もう、やだ~、思い出さないでよ。恥ずかしいじゃない」
光春さんの言葉に顔を真っ赤にする桜子さん。
きっと、光春さんが言っている話はクリスマスの話。
料理が苦手だった桜子さんが、ご主人を亡くしてからするようになった料理。
「褒めているんですよ。全く料理ができなかった桜子さんが、ここまで料理の腕をあげたのを」
「そりゃあね。お店を続けるって決めたんだったら末広のやっていたことを引き継がなきゃって必死だったもの。そのおかげでこんな料理を作れるようになったんだから――と言いたいところだけどね。半分は祥(しょう)の手作り。私より料理上手で困っちゃうわよ」
フフフっと笑いながら桜子さんは長野さんに視線を向けると、その視線を受けた長野さんはやさしく微笑み、桜子さんの髪の毛を指で梳いて耳にかけるその姿は恋人同士だった。