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蕾は開き咲きほこる
第16章 桜の下で
「ここは汐里と初めて訪れた場所、去年は上司と部下としてこの桜を眺めていましたね。――実は……こんな風に手を繋ぎたい。手を繋いで桜を眺めたいと、汐里の隣で桜を見上げながら思っていたんですよ」
写真を撮り終わった光春さんは私の傍に立つと手を繋ぎ、桜を見上げながらそんな事を話してくれる。
「男性が苦手な汐里にどこまで触れていいのか、どこまで近づいていいのか分からず様子を伺っていたんです。それが、今年は手を繋いで桜を見上げる事ができている、幸せな事ですね」
光春さんは繋いだ手を持ち上げキスを落とすと、視線だけを私に向ける。
その流れるような視線にドキッと心臓が跳ねて高鳴る。
「汐里……」
名前を呼ばれて顔を上げれば光春さんは目を細めて笑い、桜が満開に咲き誇る中、私たちはキスを交わした。
幾度となくキスを交わし、次第に深くなるキスに外にいることさえ忘れて、このまま抱いて欲しいと思うほどキスに溺れていった。