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蕾は開き咲きほこる
第22章 嫉妬
「そろそろ行かないといけないようですね」
静かな空間を壊したのは光春さんだった。
その言葉と同時に、優しかった表情は引き締まり仕事モードに変わった。
「光春さん?」
私の問いかけに返事もせず、光春さんは窓の外に視線を向けて軽く頭を下げていた。
その視線の先を辿ると、スーツを着た長身の女性が朗らかな表情をして軽くて手を振っている。
この女性が光春さんの接待相手……
相手を男性だと決めつけていた私は、相手が女性だと分かり何とも言いようのない気持ちになった。
もちろん、女性が活躍する時代、光春さんが女性と仕事をするのは知ったいたけど、目の当たりにすると良い気しない。
「申し訳ない。先方が来たようでね」
残っていたコーヒーを飲み干し、隣の椅子にかけていた上着と伝票を持って立ち上がった。
「汐里、気をつけて帰ってくださいね」
最後に私の背中を軽く撫でた光春さんは支払いをしてお店を出て行った。