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蕾は開き咲きほこる
第3章 課長の素顔
「すいません。もう帰りますから、課長は楽しんでくださ――」
「そういうつもりで言ったわけではありませんから……すいません。誤解を招くような言い方をしてしまったようですね」
慌てて帰ろうとすると、課長の手が私の手を掴んで止めた。
そういうつもりではないということは、まだここに居ていいのかとドキドキしながら聞いた。
「迷惑では……ないんですか?」
「迷惑だとは思っていません。他の社員だったらうるさくて煩わしいと思ったかもしれません。ですが……一緒に夜空を見上げてくれるのがキミでよかった」
そう言って笑った課長の顔にドキッとした。
そのまま手を引かれるようにして椅子に座り、お互いに夜空を見上げ、何も話さないまま時間だけが過ぎていった。
課長の言う通り、私も相手が課長で良かったと思う。
それは、人と居て何も話さない空間が心地よく感じたのは初めてで苦痛ではなかったから。