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蕾は開き咲きほこる
第24章 それぞれの一歩
「顔を真っ赤にして、他の人の目があるというのに声を荒げて、そんな彼を桜子さんが止めたんです。その桜子さんからも帰りの車の中でこってりと叱られましたが……それも今では良い思い出ですね」
良い思い出と思えるのなら、ここに来た甲斐があったと思えた。
だけど、ケーキを食べながら涙を流し、長野さんの胸で泣いている桜子さんの事を思い出すと胸が痛い。
「桜子さん、大丈夫でしょうか?」
「長野さんがついているので大丈夫ですよ」
大丈夫だと言葉にしても、桜子さんの話になれば一瞬にして笑顔は曇り辛そうな表情になった。
「光春さんは大丈夫、ですか?」
膝の上に置いている光春さんの手に自分の手を添え聞けば、心配している私の顔を見て光春さんは優しい笑みをこぼした。
「私は大丈夫ですよ……と言っても、汐里は信じないんでしょうね」
光春さんは苦笑いをしながら添えていた手を握り返し、もう方のほう手でポンポンと軽く撫でていた。