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第65章 決死の脱出

ドスッ！

シャワーヘッドが太田の後頭部を直撃し鈍い音が浴槽に響き渡った。

ウゥと小さなうめき声を上げ太田は前のめりに倒れこむ。

更にゴンという音がし太田は浴槽に顔面を強打し動かなくなった。

広美はその光景を見てシャワーを手にしたまま硬直した。

いったい自分は何をしてしまったのだろうか？暴力など一度も振るったことの無い広美は自分がしてしまった事に体が震えてしまう。

数秒して広美の思考回路がよみがえる。


そ、そうよ
こうするしか無かったの
わたしは悪くない
はやく、はやく逃げなきゃ

手にしているシャワーを離そうとするが、震える手はそれをうまく離す事ができない。

それでも必死に手を開きシャワーを放りだした。


に、逃げなきゃ
いや、怖い、怖いよ

広美は足が地につかないような感覚でうまく歩けなかったが、とりあえず浴槽から脱出した。