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第24章 危険な誘惑（1）

黒井由己はマッチングアプリで今日初めて会ったばかりの佑奈とレストランに向かった。


あらかじめ黒井が予約していた店だ。


黒井は29歳になる。
これまで女性関係に消極的な人生だった。
いずれは結婚するものだと漠然と時を過ごしてきたが、歳を重ねるにつれて結婚というものが誰でも簡単にできるものでは無いと言うことに気づいた。


このままでは一生独身だ、と焦る気持ちのままマッチングアプリをインストールした。


だが登録してみてわかったのは、マッチングすること自体かなり稀だということだ。


この3カ月、時間があればアプリを開き積極的に相手を探したが、会うことまでこぎつけたのはたったの１人だった。


２７歳の女性だった。
歳も近いし、登録されている顔写真も悪く無いルックスに見えた。
メッセージを続けていると一度会ってみようということになった。
黒井は私服を新調し、食事する店も予約した。


当日黒井の前に現れたのは登録してあった写真から何割も見劣りする女性だった。
張り切っていた気持ちが一気に萎えたが、当然キャンセルする訳にもいかず2人で食事をした。


食事会は特に会話も弾まずに解散となった。その後黒井からメッセージは送らなかったが、向こうからもメッセージは来なかった。
お互いに「無いな」ということだったらしい。


その後もマッチングアプリを活用したがめぼしい釣果は無い。


アプリで並べられた女性の顔写真を眺めているとピンと来る女性の写真があった。見バレ対策なのかピンボケしているが品のある顔立ちだった。年齢は18〜24歳で登録されていた。


この年齢である程度のルックスがあると競争率が一気に高くなる。これまでも黒井は見向きもされず、一切マッチングすることはなかった。
今回もダメだろうと、ダメ元でマッチング申請を送ると、なんと返信が来た。


『よろしくお願いします』


まさかマッチングするとは思っていなかったので黒井は驚いた。


一度深呼吸してからスマホを操作しメッセージを書き連ねていく。


『ユウナ』それが彼女の名前だった。