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遠き記憶を染める色【完結】
第9章 少女には見えた
少女には見えた
「流子ちゃんには、あと2,3年してからと思ったんだけど…」
「ううん、私、大丈夫だから…。ホントは、薄々なんで。結構、早熟なんだよ、私って」
「そうみたいだなあ(苦笑)。…”あの時”、海に落ちて溺れかけてるオレを、流子ちゃんは自分も泳いで助けに行くって言ってくれたんだよね。磯彦おじさんに聞いたよ。…だからさ、何しろ、キミには言わなきゃ」
「でも、あの時の私じゃあ、ムリだったしね(苦笑)」
二人は顔を向け合って笑っていたが、少しするとサダトは無理やり笑顔を押し消し、表情を変えて再び口を開いた。
***
「あの時、浦潮に呑まれてさ、オレ、あの潮に犯されたんだ。海に殺された…」
「サダト兄ちゃん!」
流子は、あまりにも唐突ななサダトの言葉を即受け止めることができず、思わず首を伸ばして彼の顔を覗き込んだ。
「…瞬間なんだ。見えたのも感じたのも、察したのも…。こうなったらオレ、戻されるわ、海に…」
「…」
「恐いのとは違ったんだ。でも、還る時がわかる。もう決まってる…」
中学1年ではあったが、この時のなぞかけのようなサダトの言い回しが、漠然とながらも、流子には何故か伝わった。
”あの日、浦潮に呑み込まれて、今までの自分は死んじゃったのかもしれない。その後はまた新しい自分になって…”
この時点での彼女はこんな解釈が自然と頭を巡った。
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「流子ちゃんには、あと2,3年してからと思ったんだけど…」
「ううん、私、大丈夫だから…。ホントは、薄々なんで。結構、早熟なんだよ、私って」
「そうみたいだなあ(苦笑)。…”あの時”、海に落ちて溺れかけてるオレを、流子ちゃんは自分も泳いで助けに行くって言ってくれたんだよね。磯彦おじさんに聞いたよ。…だからさ、何しろ、キミには言わなきゃ」
「でも、あの時の私じゃあ、ムリだったしね(苦笑)」
二人は顔を向け合って笑っていたが、少しするとサダトは無理やり笑顔を押し消し、表情を変えて再び口を開いた。
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「あの時、浦潮に呑まれてさ、オレ、あの潮に犯されたんだ。海に殺された…」
「サダト兄ちゃん!」
流子は、あまりにも唐突ななサダトの言葉を即受け止めることができず、思わず首を伸ばして彼の顔を覗き込んだ。
「…瞬間なんだ。見えたのも感じたのも、察したのも…。こうなったらオレ、戻されるわ、海に…」
「…」
「恐いのとは違ったんだ。でも、還る時がわかる。もう決まってる…」
中学1年ではあったが、この時のなぞかけのようなサダトの言い回しが、漠然とながらも、流子には何故か伝わった。
”あの日、浦潮に呑み込まれて、今までの自分は死んじゃったのかもしれない。その後はまた新しい自分になって…”
この時点での彼女はこんな解釈が自然と頭を巡った。
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