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遠き記憶を染める色【完結】
第2章 彼の事情
「流子、とにかくよかったやん。7日はオレが大岬のバスタまで迎えに行ってやるから。そんでえ、ええと、何年ぶりだろな、お前とサダ坊が会うのはよう?」


「うん…、中3の時コンサート行って、遠目に見かけた以来だから…。2年ぶりだけど…」


ただし、会って話をするのは、4年前の夏に大岬へやってきた時以来となる…。


「ああ~、あの頃はレッツロール、人気がピークだったから。流子ちゃん、控室とかでも会えなかったらしいね。まあ今なら、親戚って言えば、すぐ会えるだろうけど」


すかさず、ニヒリストの浪人生鮎男が茶々を入れた。
ただし、この指摘も微妙に的をついていた。
実際に、サダトのことを心底応援していた流子も、このところのレッツロールの人気低落は実感しているところであったのだ。


***


「鮎男!言い加減皮肉ばっかで、何なんだ、お前!サダトはよう、この大岬が好きなんだよ。きっと、年頃になった流子にも会いたくなったんだろう。なんでも、年上の大女優にはいいようにもてあそばれたってことだからなあ」


ここでビールをラッパ飲みにして、つまみの刺身をぱくついていた磯彦は、年の離れたいとこに当たる鮎男に大声で言い放った。
しかし…。


「ああ、それ、永島弓子ですよね。あの女、有名な下げマンですからね。あれからでしょう、サダ坊たちの人気、転げ坂になったの」


これも残念ながら、客観的に見て頷ける見解ではあった。
ではあるが…、サダトを応援する立ち場の縁故者が、これを評論家のように口にしてしまっては身も蓋もない。
流子は思わずため息ついて、箸を茶碗に置いてしまった。




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