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遠き記憶を染める色【完結】
第27章 彼女は彼女を見ていた
彼女は彼女を見ていた




弓子はサングラスをかけたまま、憮然とした表情でいきなり語気を荒げてコメントした。


「私は彼が命を断つなんて、想像もしていませんでしたよ。それに…、今は別れたんです。ですから、何も知りません!」


『自殺の原因が甲田さんの変わった性癖だったという指摘は、いかがでしょうか?』


「わかりません!」


『しかし、結婚前提でお付き合いされたお相手ですよ。少なくとも、その変わった性癖のことはご存知だったんじゃないですか?』


「…”そういう面”があることは、承知してました」


『それをお聞きになったのはいつ頃ですか?結婚前提を公表される前ですか?』


「ええ‥、やはり、かなり最初の頃から…、ですよ」


彼女の返答はどこか歯切れが悪かった。


***


『ということは、”その事”を理解された上で、結婚前提のお付き合いをされてたんですよね?…であれば、半年前に甲田さんと破局に至った原因は、彼が深刻に悩んでいたその性癖ではなかったのですね?』


「あの…、交際相手と別れる理由、ひとつとかとは限りまんよ。いろいろですよ!」


『では、永島さん!少なくとも、甲田さんと交際中は彼がああいった酷い死を決断したほど悩んでいた”そのこと”を、永島さんは許容していたんですね?』


「あのう…、亡くなった人の性癖ばかりを騒いで、私、不謹慎だと思いますよ。彼の人格を傷つけることになるんですから。私は心が痛みますよ。あなた方はそういう気持ちって、ないんですか?いい加減にしてください。もう、話すことありませんので!!」


ここで弓子はキレた。


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