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遠き記憶を染める色【完結】
第35章 晒し身で射る
さらに流子は、何と8月にサダトが来葉し再会した際、自分とサダトが共に愛しあう気持ちを”確かめ合った”こと、そして、その後サダトのマンションを訪れ、そこで貸金庫の中のデータを”託された”経緯と事実”もマスコミに提供したのだ。
流子からのあまりに鮮烈な証言の数々に、さしものマスコミも仰天したが、即日、潮田流子の明かした経緯・事実・その証憑たるデータ、文書を一挙に報じた。
この際、各ワイドショーの切り口と組み立ては皆同様だった。
すなわち、何かとスキャンダラスな甲田サダトの元恋人だった永島弓子の隠していた事実を突き付け、いわば年上の大女優が彼に及んだ挙動に疑念と不信を浮かびあがらせることで、現役アイドルが自ら性器を切取るという壮絶な自殺を決意したその”なぜ”を、シグナルとする意図が植え込まれていたのだ。
つまりマスコミ側には、今回サダトが世間に与えた衝撃を、彼への同情心に向き変える”誘導”が先にありきだったのだ。
そしてそのことは、ほかならぬ流子がいち早く敏感に感じ取っていた…。
***
そこで彼女は、永島弓子への世間の目が厳しくなったタイミングを突いて手記を放ったのだが…。
ここで彼女は、永島が自己弁護に出ることを予め織り込んで、あえて二の矢、三の矢をストックしておくことにした。
彼女は、マスコミの永島バッシングが論拠を持たずにエスカレートすれば、ある局面を境に、サダトへの同情モードが揺り戻しされるという読みも持っていたはずだ。
したがって、永島が何らかの言及やメッセージを発したその都度、新たなタマを打ち込み、世間の非難を浴びる風潮から彼女を逃さない戦術に出ていたのだ。
流子のマスコミ心理を利用したしたたかな世論誘導は、絵に描いたように功を奏することとなった。
何しろ、この短期間で永島弓子は世間の敵にまで達したのだから…。
だが、流子には避けられない世論の難関が待ち受けていることも承知していた。
それは…、あまりに悲劇のヒロイン的なスポットライトを受け、彼女が守るべき自分を愛する少女を置き去りにして、なんで今、あんな死を選択しなければならなかったのか…。
流子からのあまりに鮮烈な証言の数々に、さしものマスコミも仰天したが、即日、潮田流子の明かした経緯・事実・その証憑たるデータ、文書を一挙に報じた。
この際、各ワイドショーの切り口と組み立ては皆同様だった。
すなわち、何かとスキャンダラスな甲田サダトの元恋人だった永島弓子の隠していた事実を突き付け、いわば年上の大女優が彼に及んだ挙動に疑念と不信を浮かびあがらせることで、現役アイドルが自ら性器を切取るという壮絶な自殺を決意したその”なぜ”を、シグナルとする意図が植え込まれていたのだ。
つまりマスコミ側には、今回サダトが世間に与えた衝撃を、彼への同情心に向き変える”誘導”が先にありきだったのだ。
そしてそのことは、ほかならぬ流子がいち早く敏感に感じ取っていた…。
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そこで彼女は、永島弓子への世間の目が厳しくなったタイミングを突いて手記を放ったのだが…。
ここで彼女は、永島が自己弁護に出ることを予め織り込んで、あえて二の矢、三の矢をストックしておくことにした。
彼女は、マスコミの永島バッシングが論拠を持たずにエスカレートすれば、ある局面を境に、サダトへの同情モードが揺り戻しされるという読みも持っていたはずだ。
したがって、永島が何らかの言及やメッセージを発したその都度、新たなタマを打ち込み、世間の非難を浴びる風潮から彼女を逃さない戦術に出ていたのだ。
流子のマスコミ心理を利用したしたたかな世論誘導は、絵に描いたように功を奏することとなった。
何しろ、この短期間で永島弓子は世間の敵にまで達したのだから…。
だが、流子には避けられない世論の難関が待ち受けていることも承知していた。
それは…、あまりに悲劇のヒロイン的なスポットライトを受け、彼女が守るべき自分を愛する少女を置き去りにして、なんで今、あんな死を選択しなければならなかったのか…。