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遠き記憶を染める色【完結】
第36章 到達点
到達点



流子は世間の眼と論調を2つの側面で注視し、あくまでその両方をトータルに捉えた上で”判断”していた。


まずは連日のテレビ各局によるワイドショー報道を受けた、ダイレクトな大衆の反応…。
これは、翌日のワイドショーで当該関連をどう取り上げるかで、かなり明瞭に把握できた。
ここでの反応は老若男女にわたる、いわば世の声のベースと捉えていい。


一方、ネット上のSNSを中心とした書き込みや投稿の発信も、今の世の世論形成としては無視できない場である。
主として若年層の感性による指摘や切り口は、時に大衆のオピニオンリーダーをそれこそ一夜にして生み得る。
時には、前日までの世論を真逆に変えてしまう…、そんな爆発力もを秘めていると言っても過言ではない。


流子はこのことを十分に踏まえていたのだ。


***


具体的には、その日に流れたテレビのワイドショーを受けたネット上での”反応と声”を迅速かつ細かなチェックで拾い上げていた。


彼女の最も注目したコメントは以下の通りだった。


”甲田サダトが自ら切り取ったイチモツが回収されたのは、彼が溺れかけた浦潮とかって南房の大岬だろ?それって…”


”サダトにとって、浦潮は十代の時にチンポから精子を採取された定めの地だったんだ。彼の局部はその地に還ったんじゃないのか!”


”いや、正確には潮に戻されたんだ。オカルトだな、もはや…”


”サダトは海に去勢れたのよ!それで、水の中でしかイケなくなった。そのことを流子さんは理解していた。彼の深いところまで。その上で、愛を誓い合ったのよ!”


”まあ、都市伝説だな。でも、その彼女、苗字が潮田で下の名が流子って…”


”ある意味、あの二人…、現代の織姫と彦星、アダムとイブって言えないか?今時、未成年で実名晒してあそこまでってハンパねーよ”


”でも…、流子さんの気持ち…、結局どこなの?”


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