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異邦人の庭 〜secret garden〜
第6章 ペニー・レーンの片想い 〜Lady Yの告白〜
「…ソールズベリー卿。また裏玄関から入っていらしたのですか?
卿の従者が探し回っておりましたわ」
スコットランドの自然豊かなボーダーズ地方のマナーハウス…その薔薇園…。
その東屋に佇むひとりの長身の青年が振り返る。

…美しいプラチナブロンドに極上のサファイア色をそのまま映したような瞳…。
幼少期から欧州のあちらこちらで育った徳子でも一瞬、見惚れてしまうような美しい青年だ。
…アポロンが人間の姿に変えたら、こんな感じかしら…。
徳子は密かに思う。

若き美貌の青年貴族…アルフレッド・ブルー・ソールズベリー卿は春の陽光の鮮やかな煌めきを更に輝かせるように笑った。
「堅苦しい取り次ぎが苦手なんです。
こちらの薔薇を早く見たくて…。
…こんなにも見事なコンスタンス・スプライとメアリー・ローズは英国のどんなカントリーハウスやマナーハウスでも拝見できませんよ」
…それに…
と、ラテンの夏の熱い太陽を思わせる眼差しで徳子を見つめた。

「…ここなら貴女と二人だけでお会いできる…。
レディ・ヨシコ…」

図らずも一瞬どきりとしたことは、おくびにも出さない。
日本人はポーカーフェイスは得意だ。
「相変わらずおふざけがお好きね。
…まあ、貴方のお年なら仕方ないかしら?
アルお坊ちゃま」
笑って通り過ぎようとすると、その長い手が素早くしなやかに伸び…徳子のほっそりとした身体を搦め捕った。
「また子ども扱いですか。
私がどれだけ貴女に恋い焦がれているか、ご存知のくせに…」
酷く苛立った口調に、胸が甘く疼く。

…美しく若き青年の硬く引き締まった筋肉…。
細身に見えて西洋人の胸板は厚く、逞しい。
…自分より、一回りも歳下の若者…。
馬術とクリケットで鍛えられた体躯はしなやかで頑強だ。
「…揶揄わないで…。
ソールズベリー卿。ひとが来ますわ」
突き放そうとする手を逆に握りしめられる。
「本気ですよ。ひとに見られたって構わない。
僕が貴女を愛していることを、全世界に知らしめたい気持ちです」
…青年は情熱的に愛をかき口説く。

「…ソールズベリー卿…。
私は…」
抗う徳子の白い顎を強い力で摘まれ…

「…貴女のその美しい唇からNOはもう聴きたくはありません。
…ただYESと…」
…そして…

「…愛しています…。レディ・ヨシコ…」
熱い愛の言葉と、甘く激しい口づけを与えられたのだ。






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