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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
「千晴さんはお元気?
大学は楽しい?」
紗耶の背中を撫でながら、紫織は千晴と会話し始めた。
「お陰様で…。
大学に馬術部があったので入りました。
テニスサークルにも…友人に無理やり引き込まれたので、毎日忙しいですよ」
…会話の運びから、二人が以前から親しい様子が窺われた。
紗耶はじっと耳を澄ませる。

…ふふ…と紫織は小さく笑った。
しっとりとした大きな瞳が瞬き、千晴を見上げる。
「千晴さんはハンサムで魅力的な方ですもの。
大学でもさぞやおもてになるんでしょうね」

「…さあ、どうかな。
愛しているひとには振り向いてももらえない哀れな男です。
…興味のないひとに好かれても、嬉しくはありません…」

紗耶はそっと、紫織のスカートから貌を上げる。

…千晴は一歩紫織に近づくと、静かにその大きな手を伸ばした。

二人の間に漂う空気が濃密に…そしてあえかな…秘密めいた薫りを醸し出す。

…ふと、千晴は我に返ったようにやや苦しげに眉を顰めた。
そうしてそのまま、頭上の蔓薔薇のアーチに手を伸ばした。

濃いバーガンディピンクのアンジェラの花が一輪、青年によって手折られる。

息を飲んでいる紗耶と、眼が合う。

千晴は穏やかに微笑むと、紗耶の前に跪いた。

「…頑張ったお姫様に一番綺麗な薔薇をあげる…」

アンジェラが紗耶の小さな耳元に飾られた。

…甘く芳醇な…どこか切ない初夏の薔薇の薫りが紗耶を包み込んだ。

「…まあ…素敵。
千晴お兄ちゃまはまるで紗耶ちゃんの王子様みたいだわ…」

やや芝居掛かったような紫織の声が明るく響いた。

「…よく似合うよ、紗耶ちゃん…」
…夏の正装を身に付けた大人の美しい青年に、髪を掻き上げられた。
その指先が、つと紗耶の唇を掠めた。

つきりと甘く痛む胸は、味わったことのない情動だ。

…その感情は初恋と名付けられるものなのだと、紗耶が気づいたのはずっとあとのことだった。







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