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異邦人の庭 〜secret garden〜
第1章 アンジェラの初戀
紫織は千晴と手を繋いでいる紗耶を見て、驚いたようにその美しいアーモンド型の瞳を見開いた。
…紫織は長く艶やかな黒髪を淑やかに結い上げ、真珠色の柔らかなシルクシフォンのアフタヌーンドレスを身に纏っている。
同色の日傘を優雅に挿しているさまは、まるでお伽話の絵から抜け出して来た美しい貴婦人のようだ。
「まあ、千晴さん…。紗耶とご一緒にいてくださったの?」
紫織からは、ローズオットーをベースとする嫋やかな薫りが漂った。
…出掛ける先に合わせてアロマを調合するので、紫織の薫りはいつも様々に魅力的だ。
「ご機嫌よう。紫織さん。
薔薇園の方でね」
…千晴お兄ちゃま、お母様のことを…紫織さん…て、言うんだ…。
紗耶は不思議なショックを受けた。
「…松嶋の華子ちゃんたちに、少し意地悪をされていたんです」
紗耶が傷つかないようにやんわりと…けれどしっかりと伝える。
「…まあ…」
紫織が紗耶の頭を慰撫するように優しく撫でる。
「大丈夫?紗耶ちゃん?」
紗耶は直ぐに頷く。
お母様に心配は掛けたくない。
「…千晴お兄ちゃまが助けてくれたから…」
「まあ、千晴さん…。ありがとう。私の目が行き届かなくて、ご迷惑をお掛けしたわね」
「いいえ、ちっとも…」
「…紗耶は大人しくて優しいから、ついからかわれてしまうのよね」
…華子たちは本家筋に近い家の子どもだ。
ここは高遠家の庭園だし、彼女たちを悪く言うことはできない。
けれど紗耶を否定したりもしない。
紫織は大人の分別を持っているのだ。
「紗耶ちゃんはちゃんと華子ちゃんにNOと言っていましたよ。
言われっぱなしじゃなかった。
…ね、紗耶ちゃん」
まだ握っていた手に力を込められた。
紗耶は心臓が音を立てるほどに驚き、その手を振りほどいた。
そうして慌てて紫織のスカートに貌を埋めてしまった。
…普段、自信がなくて自分の殻に閉じこもりがちな紗耶は、他人に褒められることに慣れてはいない。
褒められると、どうしたら良いか分からなくなるのだ。
「あらあら、紗耶ちゃん…。
良かったわね。千晴お兄ちゃまに褒めていただいて」
紗耶の性格を熟知している紫織は驚きもせずに、背中を撫でてくれた。
ローズオットーの薫りに包まれながら、紗耶は身を縮こまらせていた。
…千晴お兄ちゃまに絶対にへんな子だと思われた…。
どうしよう…どうしよう…。
…紫織は長く艶やかな黒髪を淑やかに結い上げ、真珠色の柔らかなシルクシフォンのアフタヌーンドレスを身に纏っている。
同色の日傘を優雅に挿しているさまは、まるでお伽話の絵から抜け出して来た美しい貴婦人のようだ。
「まあ、千晴さん…。紗耶とご一緒にいてくださったの?」
紫織からは、ローズオットーをベースとする嫋やかな薫りが漂った。
…出掛ける先に合わせてアロマを調合するので、紫織の薫りはいつも様々に魅力的だ。
「ご機嫌よう。紫織さん。
薔薇園の方でね」
…千晴お兄ちゃま、お母様のことを…紫織さん…て、言うんだ…。
紗耶は不思議なショックを受けた。
「…松嶋の華子ちゃんたちに、少し意地悪をされていたんです」
紗耶が傷つかないようにやんわりと…けれどしっかりと伝える。
「…まあ…」
紫織が紗耶の頭を慰撫するように優しく撫でる。
「大丈夫?紗耶ちゃん?」
紗耶は直ぐに頷く。
お母様に心配は掛けたくない。
「…千晴お兄ちゃまが助けてくれたから…」
「まあ、千晴さん…。ありがとう。私の目が行き届かなくて、ご迷惑をお掛けしたわね」
「いいえ、ちっとも…」
「…紗耶は大人しくて優しいから、ついからかわれてしまうのよね」
…華子たちは本家筋に近い家の子どもだ。
ここは高遠家の庭園だし、彼女たちを悪く言うことはできない。
けれど紗耶を否定したりもしない。
紫織は大人の分別を持っているのだ。
「紗耶ちゃんはちゃんと華子ちゃんにNOと言っていましたよ。
言われっぱなしじゃなかった。
…ね、紗耶ちゃん」
まだ握っていた手に力を込められた。
紗耶は心臓が音を立てるほどに驚き、その手を振りほどいた。
そうして慌てて紫織のスカートに貌を埋めてしまった。
…普段、自信がなくて自分の殻に閉じこもりがちな紗耶は、他人に褒められることに慣れてはいない。
褒められると、どうしたら良いか分からなくなるのだ。
「あらあら、紗耶ちゃん…。
良かったわね。千晴お兄ちゃまに褒めていただいて」
紗耶の性格を熟知している紫織は驚きもせずに、背中を撫でてくれた。
ローズオットーの薫りに包まれながら、紗耶は身を縮こまらせていた。
…千晴お兄ちゃまに絶対にへんな子だと思われた…。
どうしよう…どうしよう…。