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異邦人の庭 〜secret garden〜
第7章 コーネリアの娘
…翌朝、定時を過ぎても起きて来ない主人の寝室を訪れ、眼に入った光景に家政婦の八重は絶句した。
…朝陽に透けてサファイア色に見える紗幕が掛かる広い寝台に、まるで初夜を過ごした熱愛の恋人たちのように、千晴と紗耶が抱き合いながら眠っていたからだ。
「…まあまあ…なんという事でしょう…!」
紗耶様とは、紗耶様がご成人され、ご結婚が決まる日まで、清らかな関係でいると政彦様や大奥様にお約束なされたのに…
と、八重は敬愛してやまない主人の千晴を初めて嘆かわしく思った。
…しかし…
…まるでいにしえの美しいお伽話の主人公たちのように静かに眠る二人に思わず眼を惹きつけられる。
…千晴はいつもの白い麻の部屋着を身につけていたが、クラシカルな純白のナイトドレスを身に纏った紗耶を抱き寄せたその姿は、さながらロミオとジュリエットのようだ…。
現実離れした美しく優美な二人に、八重は諫めたい気持ちが霧のように消え果ててゆくのを感じたのだ。
「…まあ、良いでしょう。
今日のところは多めに見て差し上げましょう…」
咳払いして誰ともなしに呟くと、そのまま静かに寝室を辞した。
…やがて八重は双子の姉にして、徳子の侍女の七重を密かに訪ねた。
そうして、今世紀最大の重大な秘密を打ち明けるように、姉の耳に今朝ほど目撃したことを話した。
七重は顔色ひとつ変えなかったが、その細い眉を僅かに跳ね上げた。
「…貴女が見たことは、私たちの永遠の秘密にいたしましょう。
もちろん、大奥様にも…」
そう断言したのだ。
八重は満足げに頷き…どこか誇らしげにこう言った。
「…全く、お若い方のお約束ほど当てにならないものはありませんわね。
完璧な紳士でいらっしゃる千晴様も例外ではありませんでしたわ」
…けれど…
と、微かに夢見る乙女のような眼差しで付け加えた。
「…お二人のお姿のお美しかったこと…。
お姉様にもお見せしたかったわ…」
…朝陽に透けてサファイア色に見える紗幕が掛かる広い寝台に、まるで初夜を過ごした熱愛の恋人たちのように、千晴と紗耶が抱き合いながら眠っていたからだ。
「…まあまあ…なんという事でしょう…!」
紗耶様とは、紗耶様がご成人され、ご結婚が決まる日まで、清らかな関係でいると政彦様や大奥様にお約束なされたのに…
と、八重は敬愛してやまない主人の千晴を初めて嘆かわしく思った。
…しかし…
…まるでいにしえの美しいお伽話の主人公たちのように静かに眠る二人に思わず眼を惹きつけられる。
…千晴はいつもの白い麻の部屋着を身につけていたが、クラシカルな純白のナイトドレスを身に纏った紗耶を抱き寄せたその姿は、さながらロミオとジュリエットのようだ…。
現実離れした美しく優美な二人に、八重は諫めたい気持ちが霧のように消え果ててゆくのを感じたのだ。
「…まあ、良いでしょう。
今日のところは多めに見て差し上げましょう…」
咳払いして誰ともなしに呟くと、そのまま静かに寝室を辞した。
…やがて八重は双子の姉にして、徳子の侍女の七重を密かに訪ねた。
そうして、今世紀最大の重大な秘密を打ち明けるように、姉の耳に今朝ほど目撃したことを話した。
七重は顔色ひとつ変えなかったが、その細い眉を僅かに跳ね上げた。
「…貴女が見たことは、私たちの永遠の秘密にいたしましょう。
もちろん、大奥様にも…」
そう断言したのだ。
八重は満足げに頷き…どこか誇らしげにこう言った。
「…全く、お若い方のお約束ほど当てにならないものはありませんわね。
完璧な紳士でいらっしゃる千晴様も例外ではありませんでしたわ」
…けれど…
と、微かに夢見る乙女のような眼差しで付け加えた。
「…お二人のお姿のお美しかったこと…。
お姉様にもお見せしたかったわ…」