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異邦人の庭 〜secret garden〜
第9章 ガブリエルの秘密の庭 〜甘く苦い恋の記憶〜
…けれど。
「言うは易く、行うは難し」
…という格言は本当なのだと、紫織は最近つくづく思うようになった。

「…ていうか…」
生徒会室の窓辺から、紫織はふくれっ面で校庭を見下ろす。

「…ちょっと、誰にでもいい貌、しすぎじゃない?」
…と、思うのだ。

…今だって…。

「藤木先生!」
「待って!一緒に教室まで行きましょうよ!」
1年生の女生徒2、3人に賑やかに囲まれ、渡り廊下を歩く藤木の白衣のすらりとした…けれどやや猫背の長身の後ろ姿が、ここから見える。
…トレード・マークの寝癖を、女生徒たちが笑いながら撫でつけようとしている。
紫織は形の良い眉を顰めた。

藤木は照れたように髪を掻き上げた。
…笑ってる!
私以外のひとに髪を触らせて!
しかも、楽しそうに!

「…何よ…にこにこしちゃって…!」
…憎たらしい!
理不尽な怒りが沸々と湧き上がる。

その念が通じたのか、藤木が一寸立ち止まり、生徒会室の方を振り仰いだ。

二人の眼が瞬間的に合う。
眼を見張る藤木に、紫織は思わずアカンベーをしてカーテンを乱暴に締めてしまう。

「知らない!もう!」
むしゃくしゃして堪らないのには、訳がある。

…それは昨日のことだ。
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