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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
その日の放課後、ようやく紫織は化学準備室に向かっていた。
…今日は化学の時間もなかったし、休み時間も先生に会えなかった…。
朝にお弁当を置いて来たきりだ…。
…やっと…やっと会える…!

嬉しさにどきどきしながら、階段を駆け降りる。
化学準備室のドアをノックもせずに勢いよく開け、紫織は思わず絶句した。

…準備室の藤木の机の向かい側 …いつも紫織が座る椅子に、ほかの女生徒がちょこんと座っているのだ。
前には藤木がいる。

「…あ…」
女生徒が驚いたように眼を見張る。
「…北川先輩…?」
…女生徒は一年生だった。
紫織はなんとなく貌を見たことがある程度だが、女生徒は紫織のことを知っているようだ。
紫織が生徒会の副会長だからだろう。

藤木がさして驚いた様子もなく、紫織に自然に笑いかけた。
「北川さん。どうしたの?」

…どうしたの…て、何よ…!
むっとして口を開きかけた時、ふと見た女生徒の手にしたものに眼が釘付けになる。

…女生徒の小さな手に持たれていたものは、ビーカーの紅茶だったのだ…。
温かそうな湯気が立っている。

紫織の胸に熱く苦いものが込み上げる。
かっとなりそうな自分をなんとか冷静に抑えようと、唇を引き結び、無機質に笑う。

「…次回の実験の準備の確認だったんですけれど、いいです。
また明日にします。
失礼いたしました」
さっさと部屋を後にする紫織の背中に、慌てたような藤木の声が飛ぶ。
「北川さん!待って…」
無視して廊下を走り、階段を駆け下りた。

息も吐かずに一階まで降り、振り返る。

「…追いかけて…くれないじゃない…!」

不意に泣き出しそうになる。
腹立ち紛れに石造りの壁を蹴った。
「バカ!何よ、もうもう!無神経野郎!」

次々と暴言を吐いていると、背後から鋭い声が上がる。
「ミス・北川!なんですか!その乱暴な言葉は!
それに壁を蹴るなんて、まあ貴女らしくもない!
どうしたのですか!?」
修道女の制服姿の風紀担当のシスター・カミラが鬼のような形相で近付いてきた。
癇性な灰色の瞳が呆れたように瞬かれる。

「す、すみません!シスター・カミラ。
申し訳ありませんでした」
素早く平身低頭で謝りながら、心の中で毒づいた。

…藤木先生の馬鹿…!馬鹿馬鹿馬鹿!



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