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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…それでコロンビア大学に…?」
尋ねる紫織に、藤木は頷いた。
「そう…。
大学院で香りの素晴らしい可能性や奥の深さ、その分野の広がりに気づいてね。
海外の大学で香料を専門的に研究をしたいと思ったんだ。
いつかは自分で香水を作りたいと思ってね…。
…世界で一番美しい薫りを、この手で生み出したいと…」
…けれど…と、微かに寂しげに続ける。
「…父が年初めに急死してね…。
兄が病院を継ぐことになり、更に僕にも帰国するようにと要請があった。
新しい体制にするために、病院経営の中に入って兄を支えるように…とね。
僕が化学を研究していて、コロンビア大学に留学していたのを上手く利用したいんだろう…。
…今まで僕のことを他人以上によそよそしく扱ってきたのに…と、少しだけ白けたよ。
…けれど、母からも帰国してほしいと懇願されて、この春帰国したんだ」
話を聞いている途中から、紫織はふと不安になる。
「…じゃ、先生、諏訪に行ってしまうの?
先生を辞めて?」
「いや。その件はきっぱり断ったよ。
兄が経営する病院に入る気はない。
もちろん、何か協力できるときは労力を惜しまないつもりだけれど…。
僕が全く違う仕事をしていた方が母に気苦労を掛けないからね」
はっきりと断言され、ほっと胸を撫で下ろす。
「…良かった…」
藤木が微笑みながら、紫織の髪を優しく撫でる。
「…聖ベルナデッタ女学院には大学の友人の紹介で採用してもらったんだ。
…最初は凄いお嬢様学校で緊張したんだけれど…今は…」
藤木の手が、紫織の顎を引き寄せた。
「…運命だと思っている…」
…榛色の瞳が、甘く囁いた…。
尋ねる紫織に、藤木は頷いた。
「そう…。
大学院で香りの素晴らしい可能性や奥の深さ、その分野の広がりに気づいてね。
海外の大学で香料を専門的に研究をしたいと思ったんだ。
いつかは自分で香水を作りたいと思ってね…。
…世界で一番美しい薫りを、この手で生み出したいと…」
…けれど…と、微かに寂しげに続ける。
「…父が年初めに急死してね…。
兄が病院を継ぐことになり、更に僕にも帰国するようにと要請があった。
新しい体制にするために、病院経営の中に入って兄を支えるように…とね。
僕が化学を研究していて、コロンビア大学に留学していたのを上手く利用したいんだろう…。
…今まで僕のことを他人以上によそよそしく扱ってきたのに…と、少しだけ白けたよ。
…けれど、母からも帰国してほしいと懇願されて、この春帰国したんだ」
話を聞いている途中から、紫織はふと不安になる。
「…じゃ、先生、諏訪に行ってしまうの?
先生を辞めて?」
「いや。その件はきっぱり断ったよ。
兄が経営する病院に入る気はない。
もちろん、何か協力できるときは労力を惜しまないつもりだけれど…。
僕が全く違う仕事をしていた方が母に気苦労を掛けないからね」
はっきりと断言され、ほっと胸を撫で下ろす。
「…良かった…」
藤木が微笑みながら、紫織の髪を優しく撫でる。
「…聖ベルナデッタ女学院には大学の友人の紹介で採用してもらったんだ。
…最初は凄いお嬢様学校で緊張したんだけれど…今は…」
藤木の手が、紫織の顎を引き寄せた。
「…運命だと思っている…」
…榛色の瞳が、甘く囁いた…。