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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…父は諏訪の総合病院の院長だった。
父の前妻の実家は地元の製薬会社の創業者だったから離婚話は相当拗れたらしいんだ。
…元々は前妻の浪費ぶりが原因で、離婚話が持ち上がったらしいんだけれど…。
すったもんだで離婚が成立するまで何年もかかってね。
その間、僕は母とこの海の町でひっそりと暮らしていた。
僕が学校に上がる年にようやく離婚が成立して、母は後妻に入ったんだ。
…けれど、家には前妻が残していった思春期の息子がいたから、母はとても気を遣って…すごく苦労していたよ。
腹違いの兄は、母に反発して、かなり困らせていたからね。
…僕に対してもあまり親愛を示してはくれなかった。
…まあ、無理はないけれどね…。
兄にとって僕の母は、結果的に自分の母親を追い出した憎い存在だろうからね…。
僕は幼心にそれらを感じて育っていったんだ」

淡々と話す藤木の横貌は静かだった。
複雑な関係の兄に対して、決して悪く言わない藤木の優しさを、紫織は愛おしく感じた。

「…兄は医者になり、副院長として父の病院に入った。
…僕は…」
一瞬、言葉を途切れさせ…けれど真っ直ぐに煌めく海の彼方を見つめながら続けた。
「…僕も本当は父や祖父のような医者になりたかった。
けれど、兄と同じ医者になることで、無駄な軋轢を生みたくなかったんだ。
…これ以上、母に気苦労をさせたくなくてね。
だから大学は地元を離れて東京に出てきた。
卒業しても帰る気はなかった。
僕が地元にいない方が、母の立場も楽になる気がしたんだ」
…いや、違うな…。
藤木は初めて自嘲じみた笑みを漏らした。

「…僕は日本を離れて自由な場所で、自由に人生を生き直したかったんだな…」







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