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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…先生…」
昨夜の甘美で濃密な記憶のまま、愛おしい男を見上げる。
「…紫織…」
顎が引き寄せられ、唇が重なりかけた瞬間…。

「お兄ちゃん!お姉ちゃん!朝ごはん、できましたって!」
入り口の扉が勢いよく開けられた。

二人は慌てて離れ、声の主を振り返る。
「…あ…!」

この民宿の息子、涼太が元気いっぱいの表情で仁王立ちしていた。

「朝ごはん、食堂に用意できましたから食べに来てって!」
小麦色の肌にくりくりした黒目が健やかそうに輝いている。

声を揃えて答える。
「あ、ありがとう!
今行きます!」

涼太が扉を閉め、快活な足音を響かせながら遠ざかるのを確認する。
貌を見合わせ、二人はくすくす笑いながら、褥の上に転がった。
そうして、戯れ合うように抱き合いながら、いつまでも笑い転げたのだった。


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