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異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
家から少し離れた緑地公園の道路に、藤木は車を停めた。
夕闇が迫り、辺りが薄暗くなる黄昏時まであと少しだ…。
「…本当はお家まで送りたいけれど…」
エンジンを切り、藤木が済まなそうに告げた。
人目に着くので、それはできない…。
紫織は首を振る。
「いいの。ここで…」
…そうして、男を見上げる。
「…楽しかったわ…。
それから…幸せだった…」
…愛するひとと、結ばれた…。
子どもだったけれど大人の恋をして、女になったのだ…。
…きっと、この日のことは、一生忘れない…。
紫織は予感めいたものを感じた。
「…紫織…」
藤木が運転席から身体を伸ばし、紫織を強く抱きしめた。
「…先生…」
…深い深い森に咲く百合と、仄暗いモッシーの薫りが、紫織を押し包む。
…藤木に愛されて、その薫りは紫織の身体にも染み付いてしまっているのに…。
「…帰りたくない…。
ずっと先生といたい…」
…離れたくない。もう、ただの一瞬も…。
泣きたくなるような寂しさが、胸に込み上げる。
「…紫織…。僕も、君を離したくない。
…このまま、君をどこかに奪い去りたい…」
…けれど、出来ない…。
お互いの眼差しが同じ言葉を呟いた。
…だから…
「…キスして…」
次に会う日まで、私の身体と心が寂しさで凍えてしまわないように…。
「…忘れられないキスをして…」
「…紫織…」
…愛している…。
愛の言葉とともに与えられたのは、熱く切なく…そして蜜より甘い恋情の口づけであった。
夕闇が迫り、辺りが薄暗くなる黄昏時まであと少しだ…。
「…本当はお家まで送りたいけれど…」
エンジンを切り、藤木が済まなそうに告げた。
人目に着くので、それはできない…。
紫織は首を振る。
「いいの。ここで…」
…そうして、男を見上げる。
「…楽しかったわ…。
それから…幸せだった…」
…愛するひとと、結ばれた…。
子どもだったけれど大人の恋をして、女になったのだ…。
…きっと、この日のことは、一生忘れない…。
紫織は予感めいたものを感じた。
「…紫織…」
藤木が運転席から身体を伸ばし、紫織を強く抱きしめた。
「…先生…」
…深い深い森に咲く百合と、仄暗いモッシーの薫りが、紫織を押し包む。
…藤木に愛されて、その薫りは紫織の身体にも染み付いてしまっているのに…。
「…帰りたくない…。
ずっと先生といたい…」
…離れたくない。もう、ただの一瞬も…。
泣きたくなるような寂しさが、胸に込み上げる。
「…紫織…。僕も、君を離したくない。
…このまま、君をどこかに奪い去りたい…」
…けれど、出来ない…。
お互いの眼差しが同じ言葉を呟いた。
…だから…
「…キスして…」
次に会う日まで、私の身体と心が寂しさで凍えてしまわないように…。
「…忘れられないキスをして…」
「…紫織…」
…愛している…。
愛の言葉とともに与えられたのは、熱く切なく…そして蜜より甘い恋情の口づけであった。