この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第10章 ビーカーとマグカップ 〜甘く苦い恋の記憶〜
そっと口唇が、離される…。
照れたように額を合わせながら、藤木が詫びる。
「…ごめん…電話だ」
恥じらいながら、紫織は首を振る。
「…ううん…。いいの。
…出て…」

紫織に微笑みながら、藤木が携帯電話を手にする。

…液晶画面の表示を見た男の表情が、微かに険しくなる。
一呼吸置いて通話ボタンを押し、耳に押し当てた。

「…もしもし…?
…義兄さんですか…」

…義兄さん…?
先生の…お義兄様?
諏訪の病院の院長だという…。
…先生の異母兄弟で…確か、あまり折り合いは良くない…と聞いたような気がするわ…。
紫織は少し緊張して、藤木を見上げる。
藤木が「心配しないで」というように、紫織に目配せを送った。

「…ええ…。帰っていました。
…はい?」
相手の言葉を聞いたらしい藤木の眉間が不意に寄せられ、厳しい表情になった。

「義兄さん。
だからそれは、先日はっきりとお断りしたはずです。
何を今更そんな…!」
…初めて聴くような強い口調であった。
息を飲む紫織に目で合図を送り、藤木はそのまま足早に寝室に向かい、姿を消した。

…私に聴かれたくない話なのかしら…。
急に胸騒ぎに似た不安な予感が、靄のように立ち昇る。

そうして、思うのだ。
…私は、まだ先生のことを、何も知らないのではないのかしら…と。

窓を打つ雨の音が、一層激しくなった。
雨音は、紫織の捉えどころのない不安を更に掻き立てる。

テーブルの上には、食べかけのシチューが寂し気に冷え始めていた…。

…その後、藤木はなかなか戻っては来なかった…。





/789ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ