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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
「…部屋に温泉があって、便利だったね」
バスタオルで濡れた髪を拭きながら暢気に笑う藤木を、紫織は軽く睨んだ。
「…もう…先生のばか…!」
…明るい昼日中に二人で入るのは恥ずかしいと、紫織が拒んだので、露天風呂には一人ずつ入った。
先に入ったのは藤木だ。
「…セックスまでしたのに?
紫織は本当に恥ずかしがり屋さんだね」
揶揄うように笑われ
「もうもう!知らない!」
男のまだ水滴の残る硬い胸板をぽこぽこ叩いた。
そのまままた抱きすくめられたから、あまり効果はなかった。
「可愛い、紫織…」
軽くキスをされ、
…さあ、入って温まっておいで…。
そう促され、紫織はバスタオルを身体に巻きつけ、硝子戸を開けてバルコニーに出る。
風は冷たいが、温暖な南伊豆の陽の光のもと、下田港が一望できる露天風呂に入る心地よさは格別だった。
新しい檜の香りも、ほっと安らぎを齎した。
「…気持ちいい…!」
思わず声が出る。
冬空はからりと晴れ渡り、雲ひとつない。
硝子越しに、すでに支度を終えた藤木が腕を組んで紫織を見つめていた。
榛色の瞳が優し気に微笑む。
「…湯加減は?」
「ちょうどいいわ。泉質もすごくいいわね。
下田の景色が見えて、気持ちいいわ」
湯船に浸かったままにこにこ答える紫織を、藤木は眩しそうに瞬きをした。
「それは良かった。
湯冷めしないようによく温まってね。
食事をしたら遊覧船に乗ったり町歩きするから」
わくわくするような楽しい計画に、子どものように手を挙げた。
「はい!」
…そして…
「覗かないでよ、先生!」
睨むふりをする。
藤木が吹き出して、背を向ける。
「はいはい。
僕はこっちでガイドブックでも見ているから、ゆっくり入りなさい」
言葉通り奥の間に入って行った藤木を目の端で確認し、紫織はばちゃばちゃと音を立ててバタ足をした。
「…幸せ…」
自然に言葉が口から溢れる。
…先生といると、幸せなことばかりだわ…。
幸せすぎて…涙が出そう…。
紫織はふっと微笑みながら、ざぶりとお湯に潜った。
バスタオルで濡れた髪を拭きながら暢気に笑う藤木を、紫織は軽く睨んだ。
「…もう…先生のばか…!」
…明るい昼日中に二人で入るのは恥ずかしいと、紫織が拒んだので、露天風呂には一人ずつ入った。
先に入ったのは藤木だ。
「…セックスまでしたのに?
紫織は本当に恥ずかしがり屋さんだね」
揶揄うように笑われ
「もうもう!知らない!」
男のまだ水滴の残る硬い胸板をぽこぽこ叩いた。
そのまままた抱きすくめられたから、あまり効果はなかった。
「可愛い、紫織…」
軽くキスをされ、
…さあ、入って温まっておいで…。
そう促され、紫織はバスタオルを身体に巻きつけ、硝子戸を開けてバルコニーに出る。
風は冷たいが、温暖な南伊豆の陽の光のもと、下田港が一望できる露天風呂に入る心地よさは格別だった。
新しい檜の香りも、ほっと安らぎを齎した。
「…気持ちいい…!」
思わず声が出る。
冬空はからりと晴れ渡り、雲ひとつない。
硝子越しに、すでに支度を終えた藤木が腕を組んで紫織を見つめていた。
榛色の瞳が優し気に微笑む。
「…湯加減は?」
「ちょうどいいわ。泉質もすごくいいわね。
下田の景色が見えて、気持ちいいわ」
湯船に浸かったままにこにこ答える紫織を、藤木は眩しそうに瞬きをした。
「それは良かった。
湯冷めしないようによく温まってね。
食事をしたら遊覧船に乗ったり町歩きするから」
わくわくするような楽しい計画に、子どものように手を挙げた。
「はい!」
…そして…
「覗かないでよ、先生!」
睨むふりをする。
藤木が吹き出して、背を向ける。
「はいはい。
僕はこっちでガイドブックでも見ているから、ゆっくり入りなさい」
言葉通り奥の間に入って行った藤木を目の端で確認し、紫織はばちゃばちゃと音を立ててバタ足をした。
「…幸せ…」
自然に言葉が口から溢れる。
…先生といると、幸せなことばかりだわ…。
幸せすぎて…涙が出そう…。
紫織はふっと微笑みながら、ざぶりとお湯に潜った。