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異邦人の庭 〜secret garden〜
第11章 ミスオブ沙棗の涙 〜甘く苦い恋の記憶〜
下田港近くにある古風な品の良い和食料理屋に、藤木は案内してくれた。
「ここは三島由紀夫や川端康成も贔屓にした店だそうだよ」
「…すごい…!
私、川端康成大好きなの。作品は殆ど読んだわ。
『千羽鶴』が一番好き」
「紫織は文学少女なんだね。
僕は日本の文学はあまり読まないからなあ…」
…そんな会話もしみじみと楽しい。

席は個室だった。
万が一、知り合いに遭遇しないように…との配慮だろう。
藤木の細やかな気遣いに気づく。

「…ねえ。先生」
「うん?」
「お外で二人でお食事するの、房総以来ね」
嬉しくて無邪気に話しかけると、藤木が穏やかに微笑みながらも切な気な表情をした。
「…そうだね」
…そうして…
「…ごめんね、紫織…」
詫びられて、紫織はきょとんとする。
「何で謝るの?」
「…本当だったら君みたいに若くて綺麗な女の子は、恋人と堂々と色んなところに出かけられるのに…。
僕のために人目を憚ってばかりで…」
紫織は首を振り、藤木の手を握り締めた。
「そんな…謝らないで。
私、今すごく幸せなのよ。
先生とのおうちデートも楽しいし、ちっとも不満じゃないわ。
…こうしてイブに旅行に連れてきてもらえて…こんなに幸せでいいのかな…て不安になるほどだわ」
「…紫織…」
握り締めた手が強く握り返される。

「あと一年ちょっとの辛抱だ。
…君が高校を卒業したら、僕たちは教師と生徒の関係でなくなる。
そうすれば堂々と会える…」
勇気付けるように言われ、藤木を見つめながら頷く。
「ええ、そうね。
…でも、少し…寂しいな…」
「うん?」
やや恥じらいながら、そっと告げる。
「私、先生の授業している姿とか、学校にいる先生を見るのが大好きなの…。
その姿が見られなくなるの、やっぱり寂しい…」

…それに…
わざと拗ねたような表情で見上げてみる。
「…私以外の生徒が先生を見たり話しかけたりするかと思うと、やきもきするわ。
…先生、モテるんだもん」
藤木が思わず吹き出した。
「モテないよ」
「嘘!先生が鈍感なだけだわ」

…だから釘を刺しておく。
「浮気、しないでね」
膨れっ面の紫織の白い頰に、藤木が素早くキスをした。
「しないさ。…こんなに夢中な恋人がいるんだから」
「…先生…」

「…失礼いたします」
…襖の外、料理を運んできた中居の声に二人は慌てて離れ、顔を見合わせて小さく笑った。




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