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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
「二宮さん、待って!」
礼拝堂に向かう石造りの長い渡り廊下で、紗耶は背後から声を掛けられた。

振り返ると同じクラスの友人、酒井菜月が闊達に駆け寄ってきた。
「ミサ、一緒に行こう」
菜月に明るい笑顔で笑いかけられ、紗耶は嬉しくなる。
菜月はブラスバンド部に所属するクラスでも陽気な人気者だ。
大人しい紗耶とは友だちもグループも違うが、なぜかよく話しかけてくれる。
「うん…。ありがとう」

「ミサ…退屈だから寝ちゃいそう。
寝たらごまかしてね」
いたずらっぽく目配せされて、思わず笑ってしまう。
「わかったわ。安心してお昼寝して」
二人は眼を見合わせて笑った。

…紗耶はこの五月に十八歳になった。
幼稚舎から通っている星南女学院の高等部の三年生だ。
習い事を多くしているためと、帰りが遅くなると両親が心配するため、部活動はしてはいない。
だから友だちもそう多くはないが、大人しい紗耶を心配して声をかけてくれる優しい友だちは幾人かいる。
…菜月のように…。
だから、学校生活は楽しい。
…幼い頃よりはかなり成長したかな…と、自分でも思う。

「ねえ、二宮さん。
二宮さん、大学は外部受験するって本当?」
歩きながら尋ねられ、躊躇いながら頷く。
「…うん」
「どうして?
うちの大学、ランクもなかなか高いじゃない?
星南は大学からは共学だし。
大学にエスカレーター式で入れるからわざわざ幼稚舎や中等部から通う子もたくさんいるのに…」

…それは本当だ。
わざわざ外部進学する生徒は数えるほどだ。
星南女学院の子女は富裕層の家庭が多い。
英国のパブリックスクールと姉妹校であり、良妻賢母の育成をモットーとした古風な由緒正しい歴史ある名門女子校に満足している親が殆どなのだ。
だから予備校に通い必至に勉強をして、国立大などを目指す生徒もいない。
大学受験がないから部活動や習い事、教養や語学にゆったりと精を出せるのも特色であり人気の学院なのだった。

「…それは…」
…その理由は…。

口を開こうとしたその時…

「…紗耶ちゃん。
…久しぶりだね」

…渡り廊下の向こう…今を盛りに咲き乱れるオールドローズ…コンテ・ド・シャンボールの大輪の薔薇の垣根を背景に、千晴が静かに佇んでいた。





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