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異邦人の庭 〜secret garden〜
第3章 コンテ・ド・シャンボールの想い人
「…千晴お兄ちゃま…」
息を呑む紗耶に、千晴は穏やかに微笑みながら歩み寄る。
「これからミサ?
僕もだよ。今日は助祭の役を仰せつかった。
…ここのフランス語の山形先生は同級生でね。
助祭に急用ができたからお前がやれと…まったく、人使いが荒い奴だよ」
屈託無く笑う千晴は、相変わらず胸が苦しくなるほどに魅力的だ。

…黒に近いグレーのスーツ、真っ白なシャツ、ブリティッシュグリーンの品の良いネクタイ、磨き上げられた黒い革靴はイタリアの老舗ブランドのものだろう。
長身で長い手足を持つ千晴にまるでモード雑誌から抜け出して来たかのように良く似合っている。
その白皙の美貌は三十歳を迎えても変わらず、寧ろ成熟味と品格が増しているようだった。
…そして千晴の周りには一種独特な冒し難いオーラのようなものが静かに漂っているのだ。

隣りで菜月が
「え?星南大の高遠先生だよね?
二宮さん、知り合い?」
と興奮したように囁いた。
「…うん…。あの…」
説明しようとした時、
「紗耶ちゃんのクラスメイトかな?」
千晴が気さくに話しかけてきた。
「は、はい!」
菜月が頬を染めて頷く。
「紗耶ちゃんがいつもお世話になっています。
僕は紗耶ちゃんの親戚なんだ。
…紗耶ちゃんはきっと大人しい女の子だと思うから、仲良くしてあげてね」
千晴の甘い微笑みに、菜月は舞い上がったように
「もちろんです!あの、私、春休みのオープンキャンパスで高遠先生の講義を聞いたんです。
20世紀初頭のイギリス文学とダウントンアビーのドラマを絡めたお話、すごく面白かったです!」
と、上擦った声で話しかけた。
「それは良かった。興味を持ってくれて嬉しいよ。
…紗耶ちゃんは…あまり僕に懐いてくれなくて寂しいんだ」
端整な…少し艶めいた流し目で見つめられ、紗耶は両手をきゅっと握りしめる。

礼拝堂の鐘が鳴り響いた。
「ああ、もう行かなきゃ。
…紗耶ちゃん。ミサの後は?部活はないよね?」
「は、はい…」
「一緒に帰ろう。家まで送るよ」
紗耶が返事をする前に
「じゃ、あとでね」
と、手を挙げ、美しい後ろ姿を見せながら礼拝堂へと向かっていった。

「か〜っこいいい〜!ああん!いいなあ、二宮さんてば!
高遠先生と親戚なんて!羨ましい〜!」
身悶える菜月の声を紗耶はぼんやりと聞きながら、礼拝堂へと姿を消した千晴を眼で追うのだった。







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