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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
「…紫織さん?どうしたの?」

優しく肩に触れる手の感触に、紫織は我に帰った。

一瞬、今がいつなのか分からないほどに、紫織は長く深い追憶の中にいたようだ。

はっとして振り返るその先にある笑顔は…

「ラボのドアが開いていたから、入ってきてしまいました。
大丈夫ですか?ぼんやりされて…」

…成熟した、完璧な美しい大人の男性となった千晴の姿だ。
あの、繊細な彫像のように線の細い優美な少年ではない。

「…千晴さん…」

…あれから、もう二十年近い歳月が流れたのだ…。

「…いらっしゃい。千晴さん」
紫織はうっすらと微笑んだ。

…ここから貴女を奪い去りたい…と熱い眼差しで見つめた少年は、今や紫織の娘と婚約し、ともに暮らしているのだ…。

…だから、私はここにいるのだ…。

どこにも行けず…ここに…。

「…お茶を淹れるわ。
すっかり暑くなりましたわね。
…冷たいカモミールティーがいいかしら。
マヌカハニーを少し入れて…千晴さんのお疲れも取れるわ」

紫織はにこやかに笑い、ラボの奥にあるキッチンへと向かった。
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