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異邦人の庭 〜secret garden〜
第13章 ミスオブ沙棗の涙 〜初恋のゆくえ〜
濃いめに淹れたハーブティーを細かく砕いたクラッシュアイスの上に一気に注ぐ。

…ハーブティーと…昨日焼いたオレンジピールのマドレーヌがいいかしら…。
紗耶ちゃんの大好物だから、千晴さんに少し持っていっていただこう…。


そう思いながら、お茶の支度をしていると、紫織の背後から千晴の長い腕がしなやかに伸びた。

「…紫織さん…。
会いたかったよ…」
母親に甘えるように柔らかく抱き竦められる。

…白檀と百合とモッシー…
紫織が調合した薫りだ。

…遠い遠い誰かを、微かに想い起こす薫り…。

「…あれ…?」
千晴が紫織を背後から抱きしめたまま、うなじに鼻先を付ける。

「なあに?」
「…いつもの紫織さんの薫りと違うね…?
…甘い蜜のような…梅の花のような…不思議な切ない薫りだ…。
何の香水?」

…ああ、あの香水を着けたままだったわ…。
引き出しの奥に眠っていた、遠く哀しい恋の記憶…。

「…資生堂のミスオブ沙棗よ…。
とうの昔に廃盤になった香水…。
…ちょっと思い出して着けてみたの…」
…そう、ミスオブ沙棗は既に廃盤になり久しい…。
もうこの薫りを手に入れることはできないのだ…。

「誰からもらったの?昔の恋人?」
少し妬いたような口調…。
鳶色の瞳が面白くなさげに紫織を見下ろしていた。

…けれどそれは、まるで大切な母親がよそ見をするのを心配する子どものような眼差しだ…。

「…そうね…。
昔々のお話しよ…」
いなす様に微笑み、さり気なく千晴の手を振り解く。

「…昔の恋の忘れ物…」

…でも…

「もう…捨てなくちゃね…」
自分に言い聞かせるように、呟く…。

…そして…

「貴方もね、千晴さん」

千晴を見上げ、優しく…けれどきっぱりと告げる。

「…貴方も私から…いいえ、貴方のお母様の幻影から卒業しなくてはね…」

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