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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
思えば藤木は不思議な男だった。
年は政彦より少し年上だから五十歳だが、年齢を感じさせない軽やかで透明感のある…そしてどことなく浮世離れした雰囲気が、彼の周りには漂っていた。
だからなのか、彼は学生に大変好かれていた。
藤木の講義は、文系の学生でも取っ付き易く分かり易く、話題や例題が実に多岐に渡っていて魅力的だったからだ。
加えて整った容姿もそうだが、飄々とした生活感が希薄な大学教授というのが興味を引いたのだろう。
理系の教授であるのに彼の研究室には、訪れる学生が後を絶たなかった。
アネゴも最初は興味半分で研究室を訪れていたのだが、
「サーヤのハセヒロ先生、ありゃなんかイイねえ。
独特の大人の色気があるわあ。
…バツイチだって?それでかなあ」
と妙に感心したように呟いていたのだ。
紗耶は藤木の飄々とした中にある、微かな孤独の匂い…というか寂寥感にとても惹きつけられていた。
ふとしたはずみで見せる胸を突かれるような寂しげな表情に、その奥底にあるものを、知りたいと密かに思うようになったのだ。
…だから書庫の影から、藤木を息を詰めるように見つめる。
ストライプのブルーのオックスフォードシャツにキャメルカラーのカシミアのカーディガンを着た藤木は、年より遥かに若く見える。
視線を感じたのか、藤木はノートパソコンの画面から眼を上げ、ゆっくりと振り返る。
…少し照れたように微笑みながら…。
「…どうしたの?紗耶さん」
榛色の美しい瞳の中に、自分が映っているのかと思うと、居た堪れないような甘酸っぱいような言葉に出来ない感情に襲われる。
「…いいえ…。
…なんでもありません…」
そう答えるのが、精一杯だ…。
年は政彦より少し年上だから五十歳だが、年齢を感じさせない軽やかで透明感のある…そしてどことなく浮世離れした雰囲気が、彼の周りには漂っていた。
だからなのか、彼は学生に大変好かれていた。
藤木の講義は、文系の学生でも取っ付き易く分かり易く、話題や例題が実に多岐に渡っていて魅力的だったからだ。
加えて整った容姿もそうだが、飄々とした生活感が希薄な大学教授というのが興味を引いたのだろう。
理系の教授であるのに彼の研究室には、訪れる学生が後を絶たなかった。
アネゴも最初は興味半分で研究室を訪れていたのだが、
「サーヤのハセヒロ先生、ありゃなんかイイねえ。
独特の大人の色気があるわあ。
…バツイチだって?それでかなあ」
と妙に感心したように呟いていたのだ。
紗耶は藤木の飄々とした中にある、微かな孤独の匂い…というか寂寥感にとても惹きつけられていた。
ふとしたはずみで見せる胸を突かれるような寂しげな表情に、その奥底にあるものを、知りたいと密かに思うようになったのだ。
…だから書庫の影から、藤木を息を詰めるように見つめる。
ストライプのブルーのオックスフォードシャツにキャメルカラーのカシミアのカーディガンを着た藤木は、年より遥かに若く見える。
視線を感じたのか、藤木はノートパソコンの画面から眼を上げ、ゆっくりと振り返る。
…少し照れたように微笑みながら…。
「…どうしたの?紗耶さん」
榛色の美しい瞳の中に、自分が映っているのかと思うと、居た堪れないような甘酸っぱいような言葉に出来ない感情に襲われる。
「…いいえ…。
…なんでもありません…」
そう答えるのが、精一杯だ…。